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−南房総の光と風を描いた画家−溝口七生遺作展

投稿者:admin|投稿日:2021年3月13日

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  • 3月11日(木)~23日(火)10時~17時 ※月曜休館、23日は15時まで 会場:千葉県南総文化ホールギャラリー 主催:溝口七生遺作展実行委員会

打ち寄せる波、岩礁、荒涼とした砂丘、立ち枯れの老木や何気ない里山など、ごく身近にある風景が、精緻な筆づかいで写実的に描かれる。画家・溝口七生さんの作品は一度や二度ならず、誰もが目にしたことがあると思う。おおよそ60年にわたり油絵を描き続けてきたが、惜しくも一昨年、83歳で他界した。
東京出身の溝口さんは、大学卒業後に岩井にあった養護学校教諭として、南房総へ着任。前後して絵筆をとり、1965年、29歳の時に光陽展に「岩井の海」を初出品し入選をはたす。以降も教職のかたわら、絵を描くことにも専念し、光陽展に出品を続けるほか、安井賞展や千葉県展にも入選、また千葉県展知事賞、県展賞、コレクターが賞を選ぶ絵画展グランプリなどを受賞している。画業へ情熱を注ぐほかにも、「平和を願う千葉県美術家の会」などに参加し、平和運動にも熱心に取り組んできた。
アトリエに残されていた約300点の遺作のなかから40点を選び展示したのが今回の遺作展。なお、1997年、南総文化ホール開館の際、このギャラリーではこけら落としとして溝口七生作品展が開催されている。
車の免許を持っていなかったため、自宅のある鋸南町勝山からは50㏄バイクにまたがりスケッチなどの取材をしていたというのも、溝口さんらしいエピソードだろう。自身の画集(2008年・作品集)に「風景との対話」と題してこんな一文を寄せている。

『自然が多く、その自然は、人間生活と密接不可分で「親しみやすい自然」である。そんな南房総の風土、自然、風景はとても好きで、心惹かれるので、描き続けている。
しかし、南房総らしさを表現したいとはあまり思っていないこともあって、明らかに南房総のあの場所で描いたのだとわかるような作品、南房総らしさが強く出ているような作品は、意外と少ないと思う。
日本の他の地域で見られるような岩・波・渚・田園・樹々、等の自然の片隅に見られる「素朴な美しさ」「生命の輝き」などに心惹かれて描くことが多いからだと思う。
(中略)
自分が風景と対話した内容やその中で感じたこと、思ったこと、感動したこと、などを込めて作品にし、作品を観てくれる人が私と同じように感じてくれれば素晴らしいとは思うのだが、同時に、私と同じように感じてくれなくてもいいから、私の作品の中の風景と自由に対話してくれればいいなと思っている。』

溝口七生 プロフィール
1936年・東京に生まれる。1960年・東京学芸大学卒業。東京都の小学校教員となり、大田区、台東区、文京区の健康学園教諭を歴任、94年に退職。教職の傍ら美術活動に取り組む。 1965年・光陽展に出品。以後、光陽会に所属。72年から94年まで委員を務める。南房総支部の支部長も長年務める。94年に退会。この間、安井賞展に入選2回、ル・サロン展入選、千葉県秀作美術展に選抜され出品など。2019年・83歳で死去。

*505号掲載

カテゴリー:トピックス, 特集

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