南房総の地層を巡る
~千葉には魅力的な地層がいっぱい~
千葉の地層10選に選ばれた南房総の地層をガイド
NHKの人気番組「ブラタモリ」で、今夜は館山がクローズアップされる。街歩きしながら地形や地質を紐解いていく番組に連動して、CLIPでは「南房総の地層」をご紹介します。
昨年は、千葉の名前を冠した「チバニアン」の根拠となる地磁気逆転期地層が話題になったが、南房総も興味深い地層がたくさんある。房総半島の土台をつくった地層、その地形を形成した秘密とは。身近で見られる地層をご案内。
異なる岩石からなる不思議な島々
鴨川松島
(鴨川市貝渚)
鴨川漁港の近く、大小の島が点在する鴨川松島は、南房総の景勝地として知られている。この島は異なる岩石から構成されており、その多くは火山岩の玄武岩からなる島で、変成岩や凝灰岩なども見られる。鴨川松島は、異なる岩石からなる不思議な島々だ。
いまの地形が形成されたのは約7000年前からだが、岩石は約4000万年前のものといわれている。鴨川松島を望む千葉県立鴨川青少年自然の家は、玄武岩の大きな塊の上に建てられており、敷地の海岸では玄武岩質の枕状溶岩を観察できる(県指定天然記念物)。
火山列島と呼ばれる火山が多い日本列島にあって、火山がない千葉県で、溶岩がみられるのは珍しい。この溶岩は、はるか遠く中央海嶺で形成され、海洋プレートに乗って移動し、日本列島に付け加わったものだ。
プレートの沈み込みでつくられた変形した地層
保田層群のカオス層
(鴨川市江見吉浦)
道の駅鴨川オーシャンパークから海沿いの細い道を辿っていくと、折り返し地点に吉浦区が運営しているオートキャンプ場がある。キャンプ客や磯釣り客がいる海岸の足元を見ると、砂岩、泥岩、凝灰岩からなる地層がはげしく破壊された奇妙な風景に出会う。
一つひとつの地層が横方向にほとんど連続しないで、あちらこちらに飛び飛びに分かれて広がっている。特に石灰分等により硬くなった地層が波食台の上に突起物として散らばっているので、その異様な光景にたじろいでしまうほどだ。
ここは、日本でも非常に若い新生代新第三紀の「付加体」を観察できる貴重な場所なのだ。約1800万年前の海底の海溝付近に堆積した地層が、海溝から沈み込む海洋プレートの力を受け、陸側にぎゅうぎゅうに押し付けられてできた「付加体」とよばれる地層である。
海底地すべりの全体像が見られる露頭
白浜の海底地すべり堆積層
(南房総市白浜町白浜)
館山と白浜を結ぶ広域農道、安房グリーンラインを白浜方面に向かって走ると「安房白浜トンネル」がある。トンネルの脇に駐車場がある。駐車場から道路の向かいの斜面に、大規模な露頭の海底地すべり堆積層を観察することができる。駐車場には地層の説明板が設置されている。
約200万年前、海底に堆積していた地層に大きな地すべりが発生して、その後の激しい隆起活動によって地上に現れたものだ。地層がちぎれていくつかの大きなブロックになっており、中には回転して上下が逆になったものも見られる。
やや離れた白浜町根本海岸には、千葉県の天然記念物に指定されている「白浜の屏風岩」がある。海底で砂岩・泥岩が交互に堆積した地層が、プレートの動きによって押し曲げられて「褶曲構造」となって、垂直に立ったものだ。白浜の海底地すべり堆積層とおなじ時期の地層であり、褶曲構造も地すべりが原因である可能性も考えられる。
縄文時代の暖かい海に生息していたサンゴ
沼サンゴ層
(館山市沼)
館山市沼地区の入江状になっている狭い農道を歩いて行くと、沼サンゴ層の露頭が保護されているケージにたどり着く。海岸線からは1㎞ほど内陸、標高約20〜30mの地点にある。
約7000〜6000年前の縄文時代の温暖期に堆積した地層には、キクメイシ、マルキクメイシ、アワサンゴなど約80種類の造礁性サンゴが含まれている。その数は現在の鹿児島南部から奄美大島に生息するサンゴの種数に匹敵する。
サンゴだけでなく、紀伊半島以南に分布する熱帯性の貝類や、熱帯から亜熱帯に生息する有孔虫や介形虫などの微化石も沼サンゴ層から見つかっている。黒潮にのって北方へ移動した熱帯の海洋生物が、房総半島周辺に分布していたことがわかる。千葉県の天然記念物に指定されている。
明治の近代化を支えた石材
鋸山の「房州石」
(富津市金谷)
富津市と鋸南町にまたがる鋸山は、ロープウェイで山頂駅までいける。日本寺境内の地獄のぞきや百尺観音から近い北口管理所から登山道へ出ると、鋸山で一番高低差があるといわれる石切場跡に着く。
鋸山の石切場は山頂付近に集中している。良質の岩石が山頂部でしか取れないためだ。山頂部は約200万年前の火山から噴出された火山灰が堆積してできた岩石からなる地層が分布しており、山腹から麓までの泥岩を含む地層と異なる。
石切場で切り出された「房州石」の石質は凝灰質砂岩〜礫岩で、白い軽石と黒いスコリア(火山から噴出される多孔質の小石)が縞模様をなしている。
房州石は幕末から明治にかけて首都圏で需要が増えた石材で、産地から近い東京や神奈川方面でよく利用された。浜金谷駅の周辺には、房州石を使用した石垣小路が続いているので、このあたりをぶらり散歩するのも楽しい。
※この記事は「千葉の地層10選ガイド」(発行:令和2年3月 編集:千葉県教育庁教育振興部文化財課)を参考にさせていただきました。より詳しいことを知りたい方はウェブで「千葉の地層10選」を検索。
お見逃しなく! 今夜放送「ブラタモリ」
「館山~房総リゾート・館山はどうできた?~」
- NHKテレビ2021年5月22日(土)午後7時30分から午後8時15分放送
千葉県・館山はどのようにして人気のリゾート地となったのか!?その秘密をタモリさんがブラブラ歩いて解き明かす!
番組内容:鋸山から見える館山のモコモコした地形の秘密・大地震の痕跡を海岸で発見!・館山の「隆起」は日本トップクラス!その秘密はプレートにあり!?・湧き出る温泉水の謎・基地はなぜ館山に作られた?・砲台の跡を利用した花壇に隠された別荘地の秘密とは。